「wonder wonderful」はネット小説けっこう読んでいる人だったらもうご存知だとは思いますが、奥蔵は昨日読みました。
すいません。ここだけの話なんですけど、12時間ぶっ通しで読みました。ええ、文字通りぶっ通しで。
あと一話でやめよう、あと一話だけ。とかなんとか言ってるうちに……。
罠だったか。
まあとにかく昨日の深夜0時に読み始めて、正午に読み終わりました。
んで、1時間だけ寝て用事を済ませて、なぜか眠くもならずに今にいたるわけです。
せっかく元に戻した生活リズムがふたたび崩壊の序曲を奏でています。
とにかく良い話だったわけですよ。
いまイースト・プレスさんという出版社さんでネット小説の文庫化という素晴らしい企画が進んでますけれど、その中の一作です。
本当は文庫を買って、ゆっくり読もうと思っていたんですが、ちらりと読み始めたら止まらなかったんだ。巧妙な罠だった。
以下はじゃっかんネタバレ含みます。まあ読んでも差し支えない程度。
話としては一言で言えば異世界召喚ものなんですけど。
主人公は十代ではないのです。高校生じゃないのです。会社員の28歳のごく普通の女の人なんですよ。
あきらかに主人公っぽい位置にいるのは彼女の妹、ひなた。異世界のある国の国王と恋をするのもひなたであり、城の人に大事に思われているのもひなた。
彼女はもう何度かこの異世界に来ていて、もとの世界に戻ってくるたび姉のこかげに体験してきたことを話します。妹の話のなかでその世界はとても楽しそうで輝いていて。
だけどふたたび異世界へ飛んだ妹の危機を感じ取り、こかげもとうとうその世界へ。
飛び込んだ世界は、決して楽しいばかりではなくて。こかげに向けられた視線も決して好意的ではなくて……。
わたしが姉という立場にいるからなのか? こんなにヒシヒシと主人公の気持ちが胸に食い込むのは……。
異世界召喚といえば、やはり主人公は「特別」な位置にいるのが常なのです。勇者であったり魔王であったり巫女であったり救世主であったり王妃になったり……。
でも、このお話ではそれは主人公の妹なのです。
それだけでも十分なのに、こかげにはさらに追い討ちが。
そんな生易しくない状況下で、それでもこかげは大人。
ひたすら体当たりで突っ走るような愛すべき主人公としての盲目さは、こかげはもう持っていないのです。
こかげは大人で、社会の中でちゃんと生きていける人で、相手の理不尽さに怒るよりも先に、相手の事情を慮ってしまう大人。
そしてなによりも、誰よりも妹のひなたを大事にして守ってやりたくて愛している。
突っ走る主人公は本当に好きですが、突っ走らない、突っ走れない主人公も好きです。
楽しいばかりじゃなかった異世界で、こかげはちゃんと生活しようとしてる。
自分の立場を正確に理解して、もしくはしようとしながら、迷ったり悩んだりして、それをちゃんと自分のなかで噛み砕いて。
でも噛み砕ききれなかったものをぶつけてしまう相手が……また良いね!
最初出てきたときはわたしもこかげと一緒になって「こいつ嫌い」と思ったけどね。
いつかは自分はもとの世界へ帰る身。妹のひなたとは違って、こかげは「ここ」で誰かと恋愛をしようなんてさらさら思ってない。思ってないんだけど……。
こかげの葛藤も切ない。
読み終わったあとのあのなんとも言えない清涼感と切なさはいったいどうしたことでしょう。いろんな感情がない交ぜになって、ちょっとしばらく消化できなさそうだなあとしみじみ思いました。
わたしなんかは、もう最後らへんで「いいじゃんもうこかげ突っ走っちゃえば!!」と心の中で叫んだのですが、これもやっぱり子どもな意見かねえ。だろうねえ。
あ、あとこかげが、会社が始まる月曜日までにもとの世界に帰れればいいなと本気で願っているのが……ああもうどうしようもなく大人だなと思って笑えました。
良い作品に出会えてよかったです。
追伸。「二度目」を願ってやみません。
二伸 そういえば某Tさんがタイトル案を出してくれたおかげで無事アウトサイダー19話更新です。ご協力感謝感謝。いや棒読みじゃないよ。